自己決定権について。
自己決定権という考え方の背後には、次のような前提がある。
「世界とは関係のない場所に確固たる〈自己〉なるものが存在する」
「その〈自己〉の下す決定は常に正しい」
「かりに決定が間違っていたとしても、その全責任を負うのは自分である」
しかし、その前提は正しいのだろうか。
もしこの前提がすべて通るなら、世界はとてつもなく苛烈で冷たい弱肉強食の世界になるだろう。
だから僕は、自己決定権なるものを無闇にもてはやすのには反対。よけいに人間は生きるのが苦しくなるし、かえって自由はなくなる。
もちろん「誰かに決定を委ねるのも自己決定権の一つだ」という主張も出て来るだろう。
しかしそんなものは詭弁であり、だとしたら自己決定権などはなんの意味もないということになる。
この世のすべてのことを自分で決めないといけないことになったら、ほとんどの人は発狂してしまうだろう。
僕らがまがいなりにも正気を保っていられるのは、誰かが勝手に僕らのことを決めてくれているからに他ならない。